豊かな色彩に溢れる現代社会。空の色、自然の色、街並みの色、生活用品の色などに加えて、さまざまな画面が表示する色があり、最新のモニターやスマートフォンは10億色を超える色の再現力をもつと言われている。そんな21世紀の社会に生き、パンデミックを経験した私たちは、写真や動画、ゲームを画面で見る機会が増え、現実の色より画面越しの「仮想の色」に慣れつつある。
本展覧会では、近代から現代までの美術家たちが獲得してきた「色彩」とその表現に注目。ポーラ美術館のコレクションから、モネ、ルノワールをはじめとした19世紀フランスの印象派や、スーラ、シニャックに代表される新印象派、20世紀のフォーヴィスムや戦後の抽象表現主義などの名品を中心に展示。さらに、新たに収蔵した10点の初公開作品も加え、近代から現代までの西洋絵画における色彩の歴史をひもとく。また、色を表現する素材や色彩構成の研究にいそしむ現代の作家たちの新作も数多く紹介。
日々研究を重ね、独自の表現方法を編み出し、時代を表してきた美術家たち。彼らが人生をかけて生み出した色彩の秘密に目を向けてみましょう。その経験は、日々の暮らしに彩(いろどり)をもたらし、自身のなかに眠っている「本当の色」を呼び覚ましてくれるかもしれません。
〔展覧会のみどころ〕
初公開作品10点とともに、印象派から現代美術までの展開をダイナミックに紹介
ポーラ美術館のコレクションには、モネ、ルノワールをはじめとした19世紀フランスの印象派や、スーラおよびシニャックに代表される新印象派、20世紀のフォーヴィスムや戦後の抽象表現主義など、近代から現代にかけての西洋美術の歴史をたどることのできる主要な画家の重要な作品が数多く含まれている。本展覧会では、ポーラ美術館の名品を中心に、近年新たに収蔵した10点の初公開作品を加え、近現代美術における「色彩」の変遷をダイナミックに紹介。
絵具の革新と色彩論の発達 ―絵画の歴史をひもとくキーワード
19世紀の初頭、フランスでは光の作用が引き起こす色を科学的に解明しようとする試みがなされた。これは、色を色相(青、黄、赤など)によって分類するだけではなく、明度や彩度といった新たな軸を用いて分析する「色彩論」が発達したもので、補色関係などの色同士の組み合わせや新たな色彩の効果が発見された。こうした色の科学は現代のデジタル技術にも活かされている。さらに、19世紀半ばから科学の進歩によって登場した新しい絵具は、画家たちのパレットを豊かにし、色彩論に基づく理論上の色彩効果を画面上に実現させることに貢献した。
本展覧会では、近代から現代までの西洋絵画の色彩における革新の歴史をひもとく。
画家たちの新たな表現方法の探求に注目
20世紀前半のヨーロッパやアメリカでは、合成顔料の開発による彩度の高いあざやかな油絵具をはじめ、新たな人工素材であるアクリル樹脂を使用した絵具などの研究が進んだ。戦後アメリカの抽象表現主義の画家たちは、そのような新しい絵具による表現の可能性を求めて、ポーリング(流し込み)やドリッピング(たらし)、ステイニング(染み込み)をはじめとするさまざまな技法を試みた。そこには、絵画における伝統的な手法から脱却し、イーゼルに向かって制作する従来の画家のイメージを覆しつつ、大型の画面を実現しようとする風潮も。新しい描法を駆使し、形式に収まらない自由で開放感のある表現は、現代の作家たちの作品にも受け継がれていく。
現代の作家たちの新作を数多く紹介 ―これからのアートの可能性を探る
本展覧会では、近代から戦後の美術家たちの絵画にインスピレーションを受け、色を表現する素材や色彩構成の研究にいそしむ現代の作家たちに焦点をあてる。伝統的な色材や新たに開発された材料を選択し、それらを自由に組み合わせながら形式にこだわらずに独自の芸術を具現化しようとする作家たち。その一方で、もっぱら「用と美」の美意識にもとづく工芸あるいは色彩豊かな立体作品を手がけながらも、総合的な空間装飾への関心を背景として、素材の特性から立ち現れる伝統的な色合いをとどめた平面あるいは半立体の造形に美を求める作家も。彼らの色彩に向き合う姿勢や色彩を活かした創作活動から、これからの現代アートの可能性を探る。
【 関連プログラム 】
■ 2024年12月14日(土) 14:00~15:00 前田信明 アーティストトーク(終了)
本展覧会の出品作家のひとり、前田信明がこれまでの自身の制作のあゆみや、ジャッドやフレイヴィンらのミニマリズムとのつながり、そしてカラーズ展の出品作について語る。[聞き手:三木 学 (色彩研究者、文筆家、編集者)]
■ 2025年1月12日(日) 11:00~12:15頃 ギャラリートーク・リレー(近代~戦後美術篇)
展覧会担当学芸員や当館スタッフ計5名が、本展の中でとくにおススメしたい近代の「色彩」をピックアップし、それぞれ平均15分間のトークを連続して行う。
開催日 | 2024年12月14日(土)2025年5月18日(日) |
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会場 | |
所在地 | 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285 |
アクセス | 箱根登山鉄道「強羅」駅から施設めぐりバスで約13分 〔東名〕御殿場ICから約25分 |
TEL | 0460-84-2111 |
ホームページ | https://www.polamuseum.or.jp |
開館時間 | 9:00〜17:00 |
休館日 | 企画展・会期中無休(悪天候による臨時休館あり) |
入館料 | 〈大人〉2,200円 〈大学・高校生〉1,700円 〈中学生以下〉無料 |
施設情報 | レストラン・カフェ・ミュージアムショップ |
駐車場 | 有り(有料・1日 500円) |
更新日 : 2025.01.11