日本では外国映画を鑑賞する際、伝統的に吹き替えではなく字幕をつけて観ることが好まれ、戦前から主流となってきた。必然的に映画字幕の文化は高度に発達し、目で瞬時に読むのに適した字数や字幕の出るタイミングなど、作り方の骨組みが確立された。
フィルムの画の上に字幕をのせることから「スーパーインポーズド・タイトルズ(superimposed titles)」と呼ばれるこの特殊技能は、日本では「スーパー字幕/字幕スーパー」と呼ばれている。初の日本語スーパー字幕付き映画は1931年公開の『モロッコ』で、以来外国映画には優れた翻訳者たちの手によっていくつもの名訳が刻み込まれてきた。この『モロッコ』の字幕を手がけた田村幸彦に抜擢され、スーパー字幕の “専門職第一号” となった清水俊二をはじめ、『カサブランカ』(1942年)で「君の瞳に乾杯」という名訳を生み出した高瀬鎮夫、川喜多夫妻が日本に紹介した『天井棧敷の人々』(1945年)や『第三の男』(1949年)、『禁じられた遊び』(1952年)など欧州映画の名作を翻訳した秘田余四郎……と、これまで卓越した職人たちが映画全盛の時代を陰で支え、字幕文化の道を拓いてきた。
本企画展では、かつてタイトル・ライターが字幕カードを手書きしていた時代の制作プロセスやその歴史の変遷、映画字幕翻訳の仕事にまつわる事柄を関連資料とともに振り返る。また、字幕翻訳者が選出した「想い出の名セリフ」の数々を、映画イラストレーターとして知られる宮崎祐治のイラストとともに紹介する。
見どころ
①『天井棧敷の人々』『望郷』『赤と黒』など川喜多夫妻が日本に紹介したフランス映画の名作の字幕を手がけた秘田余四郎の貴重な翻訳原稿などを展示。
② 戸田奈津子さんや松浦美奈さん、アンゼたかしさんなど現在も第一線で映画字幕を手がけている翻訳者の方々、十数名の「想い出の名セリフ」や忘れられないエピソードとその関連資料を展示。
③「お楽しみはこれからだ」「君の瞳に乾杯」「完璧な人間などいない」「好いた同志には巴里も狭い」など映画史上の名セリフを、映画イラストレーターの宮崎祐治さんや和田誠さんのイラスト、ポスターとともに紹介。
④かつて手書きで字幕を制作していた時代のタイピングマシーン、タイトルライターの手書きの字幕カード、銅板などを展示し、字幕の制作工程を詳しく紹介。
上映
『モロッコ』(1930年)
『邂逅(めぐりあい)』(1939年)
『第三の男』(1949年)
『神の道化師、フランチェスコ<デジタル・リマスター版>』(1950年)
『死刑台のエレベーター<ニュープリント版>』(1957年)
『ローラ』(1961年)
『スティング』(1973年)
『カンバセーション…盗聴…<4Kレストア版>』(1974年)※2K上映
『思春期(旧題:ジャンヌ・モローの思春期)』(1979年)
『愛と哀しみの果て』(1985年)
『プライベート・ライアン』(1998年) ※PG12作品
『瞳をとじて』(2023年)
映画鑑賞料金(展示観覧料含む)
〔一般〕1,000円 〔小・中学生〕500円
イベント「特別上映『瞳をとじて』+トークイベント
英語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語の映画字幕翻訳者である原田さんをお招きして、字幕翻訳を手掛けた作品の一つ『瞳をとじて』を振り返る。また、多言語を翻訳する楽しさ・難しさ、映画祭と劇場公開作に携わるときの違いや魅力などを語っていただく。
開催日時 | 2025年3月29日 (土)13:00~ |
ゲスト | 原田りえ さん(字幕翻訳者) |
チケット発売 | 2025年2月8日(土) |
特別上映料金 | 〔一般〕1,600円 〔小・中学生〕800円※展示観覧料含む |
ギャラリートーク(要展示観覧料)
企画展「映画字幕翻訳の仕事 ——1 秒 4 文字の魔術」の見どころを担当学芸員が紹介。※終了後、希望者は旧和辻邸をご見学いただけます。
開催日 | 2025年1月19日(日)2025年3月30日(日) |
---|---|
会場 | |
所在地 | 神奈川県鎌倉市雪ノ下2-2-12 |
アクセス | 「鎌倉」駅から徒歩8分 |
TEL | 0467-23-2500 |
ホームページ | https://kamakura-kawakita.org |
開館時間 | 9:00〜17:00(入館は〜16:30) |
休館日 | 月曜日(2月24日は開館)、2月25日(火) |
入館料 | 〔大人〕200円 〔小・中学生〕100円 ※鎌倉市民(市内に住所を有する方)と市内の小・中学校に通学する児童・生徒の方は無料 ※映画鑑賞は別途 ※特別展会期中は異なる |
駐車場 | 無し |
更新日 : 2025.02.04