日本初の野外彫刻美術館 「彫刻の森美術館」の開館55周年を記念して開催される、彫刻家 舟越桂の作品展。2023年3月より準備を進め、2024年3月29日に逝去する直前まで展覧会の実現を望み、創作に励んだ作家本人の意思と、遺族の意向を尊重して開催。遠くを見つめるまなざしを持った静かな佇まいの人物像で知られている舟越桂の作品を、4つのテーマ別に紹介し、生涯を通じて人間とは何かを問い続けた作家の作品の変遷とその創作の源となる視線に迫る。アートホールでは 「彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選」(7/6〜12/1)も同時開催。
舟越 桂 Katsura Funakoshi
略歴
1951年岩手県盛岡市生まれ1975年東京造形大学彫刻科卒業1977年東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了1986-87年文化庁芸術家在外研修員としてロンドンに滞在2024年3月29日没 享年72歳
受賞歴
1995年第26回中原悌二郎賞優秀賞受賞1997年第18回平櫛田中賞受賞2011年紫綬褒章受賞
展示構成・見どころ
展示室1 ー 僕が気に入っている ー
いつも自身が気に入っているものに囲まれていた、彫刻家 舟越桂。そこには必ず彼の手ざわりの跡が残されている。それはアトリエであっても、どこであっても同じだった。代表作のひとつ《妻の肖像》(1979-80年)は、舟越のアトリエに今も大切に置かれている。
展示室1の前半部分では、日々の創作活動を垣間みれるデッサンやメモ、舟越が実際の制作に使っていた手製の作業台やデッサン用の一本足のイスなどを公開。後半部分に展示された「立てかけ風景画」は、病室の窓から見える雲がきっかけとなって生まれた作品で、厚紙の裏に鉛筆で描かれた幻想的な風景画。舟越はこれを繰り返し描いては食事で出されるヨーグルトのカップで作った台に立てかけて眺めていた。
展示室2 ー 人間とは何か ー
「日々、世界で起こる戦争や紛争には怒りや憤りを感じます。しかし人にはそれぞれ役割があり、自分は怒りや悲しみをぶちまけるのではなく、人間の存在を肯定していきたいのです。」と語る舟越は人々が抱える孤独や矛盾、二面性にも目を向ける。
展示室2は、「人は山ほどに大きな存在なのだ」と感じた体験がもとになって生まれた彫刻《山と水の間に》(1998年)、「相反する自分」という考えから生まれた胴体が後ろ前の人物や、支え合って生きる人間の姿を描いたドローイング《雪の上の影》(2002年)などで構成されている。
展示室3 ー 心象人物 ー
一貫して人間の存在をテーマにしながら様々に変容を遂げる作品を舟越は自ら「心象人物」と名付けた。最初のイメージから言葉が見つからないままに制作を始めた《水に映る月蝕》(2004年)について、彼はのちに“浮く“というイメージを見出し「それは現実から少し解き放たれることであり、そうであればそれは“祈り“の思いや行為に姿を与えたのかもしれない。」と語っている。
展示室3には、東日本大震災がきっかけとなって制作された《海にとどく手》(2016年)や、人間のすることを丘の上から見続けているスフィンクスをイメージした《戦争を見るスフィンクスⅡ》(2006年)などを展示。「世界を知るとは?」というスフィンクスの問いかけに「自分自身を知ること」と少女が答える場面に感銘を受けた舟越は、両性具有の身体と長い耳を持った、人間を見続ける存在としての「スフィンクス」を題材にした作品を多く残した。
展示室4 ー『おもちゃのいいわけ』のための部屋 ー
1997年、舟越桂が家族のために木っ端で制作したおもちゃを集め、一冊の絵本のような作品集に仕上げた名作『おもちゃのいいわけ』を、「舟越桂 森へ行く日」展を記念して27年ぶりに増補新版として復刊。
展示室4は、刊行を記念して「木っ端の家」や「クラッシックカー」といった往年のおもちゃ達とともに、新たに本に加わるものの中から「立ったまま寝ないの!ピノッキオ!!」(2007年)、「あの頃のボールをうら返した。」(2019年)などで構成。そして、入院中も絶えず描いていた創作のためのイメージデッサン。創作の源ともいえるその貴重な内容を、自ら語った映像で紹介する。
開催日 | 2024年7月26日(金)2024年11月4日(月) |
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会場 | |
所在地 | 神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1121 |
アクセス | 箱根登山鉄道「彫刻の森」駅前から徒歩2分 |
TEL | 0460-82-1161 |
ホームページ | https://www.hakone-oam.or.jp/ |
開館時間 | 9:00〜17:00 |
休館日 | 無休 |
料金 | 〈大人〉2,000円 〈大学・高校生〉1,600円 〈中学・小学生〉800円 ※2024年4月1日より上記入館料に改定 |
施設情報 | ピカソ館・アートホール・足湯・レストラン〈飲茶・ビュッフェ〉・カフェ・ショップ |
駐車場 | 有り(有料) ・美術館来館:〔普通車〕500円(〜3時間まで/以降1時間ごとに500円加算) ・レストラン・売店利用、一般駐車:〔普通車〕500円/1時間 |
支払い |
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更新日 : 2024.07.28